クリエイティブ・スイッチ:企画力を解き放つ天才の習慣

本(ビジネス、科学、経済など)

久しぶりに楽しい本で熱中して2/3まで一気に読んだ。
冒頭を飾るのがビートルズのポール・マッカトニーが不朽の名曲「イエスタデイ」を思いついた時の話。
彼は夢で浮かんだメロディとコード進行があまりにも素晴らしいので「これはきっと誰かの曲を聴いたのを覚えていたに違いない」と自分のオリジナルとは信じられず、初めにジョン・レノン、そして著名なミュージシャンに「この曲聴いた事ある?」と尋ねて回ったそうだ。

ポールを筆頭に、モーツァルトにミケランジェロ、ダーウィンの逸話を挙げながら、天才が思いつくということはどういうことか考察していく。

偉人の話だけではなく数々の実験による検証も行われている。これが非常に興味深い。
よく言う「1万時間の法則」が実は嘘であることが実証される。時間そのものより練習の内容が重要なのだ。

タクシーの運転手は海馬が肥大している。これは空間認知能力が向上している事を意味する。面白いのはバスの運転手ではこのような事は起こらない。何故ならタクシーの運転手は毎回違う場所に行かなければならないがバスの運転は同じルートを走るだけだからだ。タクシーの運転手でも新人よりベテランの方が海馬が発達している。

この他、ヒットの法則を探る上で「ザイアンス効果」についても深い研究がなされる。「単純接触効果」として有名なこの作用は実は思ってる程単純ではない。人は皆、初めて見るものを恐れる習性がある。これは太古の昔から危険を回避するためにこういう特性を持つものが生き残った故だ。

そして馴染みがあると人は親しみを覚える。ところがこれには限度があってある閾値を超えると今度は嫌悪感が増してくるのだ。全ては新鮮な内は熱狂を呼びやがて飽きられる。

これは音楽にも共通するのだが、ここでも面白い実験結果が示される。ネットで拾った曲を被験者に数百曲聴いてもらいMRIで脳波を調べつつ、「どの曲がヒットするか?」と尋ねる。すると脳の報酬系が強く反応した曲は実際のヒットと相関があったのだ。逆に質問の答え自体とヒットとの相関はなかった。つまり意識的な答えは全くの的外れにも関わらず、無意識は見事にヒットを予知していたのだ。

アイディアを思いつくには良い頭脳が必要か?実験でアイディアを思いつく数を調べるとIQ86までは相関があったがそれ以上は有意な差は認められなかった。量ではなく質なのか?と調べると今度はIQ104まで相関が認められたもののそれ以上は関係なかった。つまり頭の良し悪しはさほど関係がない。

映画好きの少年がレンタルビデオ店の名物バイトになり(店にある全ての映画を見尽くしたので客にピッタリなオススメを言えた)やがてNetflixの最高コンテンツ責任者にまで上り詰めた話は面白い。このように優秀な人間は皆自分の領域に関するコンテンツを大量消費しているのだ。

成功への条件は残念ながら優秀さだけではなく押出の強さとタイミングも強く関わってくる。
ダーウィンと同時期に自然選択を思いついたアルフレッド・ウォレスは強くアピールしなかった故に歴史に残る名前としてはダーウィンの影に隠れる事になった。このような事例は山程ある。

このようなワクワクするような話が沢山詰め込まれた本書は超オススメの一冊です。